中学生の時、とてととても気になる女の子がいた。
もちろん小学生の時だって常に気になる女の子はいたのだが、
人目ばかり気にして、格好ばかりつけて、
それでいて無口な僕は人を好きになってもどうすることも出来ずにいた。
気になった女の子は中学1年生の時に同じクラスになった子だ。
髪の毛が茶色っぽくて、第一印象はお人形さんの様。
黒髪が当たり前の時代だったから、それだけですぐ目に付いたし、目立っていた。
声が大きく、よく笑う子だった。
クラスの目立つグループにいるわけでもなく、
特定の仲の良い子と隅の方で話をしている様な子だった。
おとなしいわけでもなく、男の子とも、よくふざけて話をしていた。
入学した時の座席は出席番号順で、僕も彼女も早い方なので割と席は近かった。
彼女の隣に座っていた男の子が僕の友達で、
その彼と彼女が隣同士でよくしゃべっていた為、
彼の友達である僕にも自然と彼女の視線が向くことが多かった。
好きになったのはいいけれど、恥ずかしくて友達と恋バナなんて出来ないし、
誰かに相談なんて出来ないし、悶々とした日々が続いた。
何かきっかけが欲しい。
そんな気持ちでいた中、夏休みが明けた2学期、
なんと席替えで僕は彼女と隣同士になった。
奥手な僕はなかなか自分から話しかけることが出来ない。
彼女も僕の様子を窺っている。
彼女はとてもクールだった。そして、とても親切だった。
授業中に先生の説明が分からずにまごまごしていると、
隣からサッと教科書を差し出して教えてくれたり、
先生に指されて質問に答えられないと、
自分のノートを差し出して要点を教えてくれたり、
何となく僕のことを気にかけてくれていた。
彼女は頭が良くて成績も良く、勉強はとても敵わなくて、
教わっている時はまるで年上のお姉さんの様に思えた。
それでも僕は彼女の前では格好つけたいから、
普段は消極的で授業中に手を上げて答えるなんてことはしなかったのに、
彼女の前ではハキハキと手を上げて、目立つような行動をとる様にした。
いつもと違う僕に気付いた彼女は、少し驚いたような表情で僕の顔を見ていた。
そして顔をあわせると、いつもニコッと微笑んでくれた。
せっかく隣同士になったのに、僕が消極的過ぎて、
プライベートな話はほとんど出来なかったと思う。
どんな会話をしたか思い出すことが出来ない。
彼女と同じクラスでいれたのは1年生の時だけで、
クラスが分かれてしまうと会話することは当然無くなった。
それでも僕は3年間ずっと片思いで彼女を好きでいた。
中学校を卒業してお互い違う高校へ行っても、
彼女を超えるほど好きになれる女の子には出会えなかった。
高校を卒業する間近、通っていた自動車学校で、偶然にも彼女と再会した。
彼女の印象は全く変わっていなくてあの頃のままだった。
少しだけ視線が合い、彼女も僕がいることに気付いた。
ドキドキしたが、躊躇してしまい会話をすることは無かった。
僕にとって彼女は特別な存在で居続けても、彼女にとって僕は何でもないかもしれない。
思い出は良い思い出のままとっておいた方がいい。
なんて思ったけど、結局僕に会話する勇気がなかっただけだ。
本当に情けない。
モヤモヤした気持ちが、当時はずっと残っていた。
次の恋に進むまでに随分と時間がかかった。