中学生になって、好きな女の子が出来た。
おとなしくて奥手な僕は告白出来ず、3年間の片思いだった。
彼女とは中学1年生の時に同じクラスだった。
髪の色が少し茶色っぽかったのが印象的で、ハキハキとしゃべり、よく笑う子だった。
クラスの目立つグループや人気者のグループにいるわけでもなく、特定の仲の良い子と割と隅の方で仲良く話をしている様なタイプの子だった。
入学時の座席は出席番号順で、僕も彼女も早い方なので割と席は近かった。
彼女のとなりに座っていた男子が僕と同じ小学校で、彼とよくしゃべっていた為自然と彼女の視線もこっちに向いた。
好きになったのはいいけど、どうしていいのか分からない日々が続いた。
そして夏休みが明けて2学期。席替えで僕は彼女のとなりになった!
彼女はクールでとても親切だった。
授業中、先生の説明が分からずに僕がまごまごしていると、となりからサッと教科書を差し出して助けてくれたり、先生の質問に僕が答えられなかったら、自分が書いたノートを僕に差し出して要点を教えてくれたりした。
彼女は頭が良く成績はクラスでもトップに近いような子だったから、勉強はとても敵わなかった。
それでも僕は彼女の前ではかっこつけたいから、普段積極的に手を上げて答えるなんてことはしなかったのに、ハキハキと手を上げて、授業中目立つような行動をとった。
いつもと違う僕に気付いた彼女は、少し驚いたような表情で僕の顔を見ていた。
そして顔をあわせると、彼女はニコッと微笑んで自分の教科書に視線を落とした。
秋の林間学校での研修ではとなり同士になり、竹細工でカゴを造った。苦労して造ったカゴをお互いに見せ合った。
彼女と同じクラスでいれたのは1年生の時だけで、クラスが分かれてしまうと会話することが無くなった。それでも僕は彼女を好きでいた。
中学校を卒業してお互い違う高校へ行っても、彼女を超えるほど好きになれる女の子には出会えなかった。
そして高校卒業間近、通っていた自動車学校で、偶然にも彼女と再会した。
彼女は全く変わっていなくてあの頃の印象のままだった。
少しだけ視線が合い、彼女も僕がいることに気付いた。
ドキドキしたが、躊躇してしまい会話をすることは無かった。
僕にとって彼女は特別な存在で居続けても、彼女にとって僕は何でもないかもしれない。
思い出は良い思い出のままとっておいた方がいい。
その時は少しモヤモヤした気持ちだったが、今となってはそう思える。
「遠い存在」