小学校6年生の時に水泳の競技大会に参加した。
静岡市には「葵」という有名なスイミングクラブがあり、公式な水泳大会に出るような選手といえば、そのクラブに通っている子達だったり、学年の中でもいかにも運動が得意といった感じの子達だった。
クラブにも通っていない、技術も何も無かった僕が参加出来たのは、クラスの水泳の授業で平泳ぎのタイムが速かったことと、夏休みに校内で行われていた水泳教室に、毎日休まず参加していた真面目さを買われたからだったと思う。
いわゆる異例の選出だった。担任の先生から推薦をされた時は当然戸惑った。
「なぜ僕が?」という気持ちだったが、両親からも「せっかく推薦されたんだから頑張ってみなさい。」と言われ、不安ながら参加を決断した。
参加するからには当然結果が求められる。次の日の放課後から猛練習が始まった。
しかし、大会の前日まで不安な状況が続く。平泳ぎでの参加だったが、クリアすべき基準タイムが練習しても出せなくなってしまっていたからだ。
競技大会のルールは、競技別にクリアする基準タイムが決まっていて、それを各個人がクリアすれば得点が付く。クリアした得点が多い小学校が優勝するというものだ。
日々練習を重ねても同じようなタイムが続く。ついに大会前日まで基準タイムをクリア出来なかった。
担任の先生に気の抜けた様子で笑って不安を口にしてしまった。
「お前、笑ってる場合か!明日が本番なんだぞ!」と怒られた。
翌日、ぶっつけ本番で臨むしかなかった。
大会には両親も応援に駆け付けてくれた。一緒に大会に出た生徒達みんなから激励の言葉をもらった。小学校の体育担当の先生も直接僕のところに来て「お前、今日は頑張れよ!」と声をかけてきた。みんな心配しているのだ。
そして本番!緊張して臨んだが、とにもかくにも全力で泳ぐしかなかった。
結果はタイムクリア!!本番だけ成功出来た!
心配してくれていた女性の先生が泣きそうな表情で「よく頑張ったね!!本当に良かった!」と言って、プールから出た濡れたままの僕を抱きしめてくれた。
体育担当の先生が「よくやった!おめでとう!」と言ってくれた。
担任の先生は両親と一緒に本番を見ていてくれたらしい。「〇〇君、頑張りましたね!良かったですね!」と声をかけてくれたと両親が言っていた。
もちろん、担任の先生からも直接「頑張ったな!おめでとう!」と褒めてもらった。
本当に映画のような出来事だった。
みんなが頑張った結果、我が小学校が優勝!小学校生活の、ある意味ハイライトになった。
この時の頑張りは今の生活にもきっと生きている。
「異例の選出」